黄金樹のねもとの隠れ家

週末、駐在超人でも主だった任務や事務がない超人には暇ができる
そしてその暇の過ごし方は超人それぞれ、固有の時間を過ごす
ひとり鍛錬に勤しむもの、仲間と街へ繰り出すもの、祖国へ帰郷するもの
みな思い思いの週末を有意義に過ごしていた

ジェイドやスカーフェイスもそんな駐在超人のひとりである
スカーフェイスに帰郷する国はなく、また街へ繰り出す興味もなかった
そんなスカーの週末はおのずと限られてくるのだが、近頃はそうでもない
そこにはジェイドの存在がある
ジェイドには帰郷すべき祖国があるが、帰ってもジェイドを待つ人は誰もいない
また街で遊ぶことにもさほどの興味がもてなかった
となるとジェイドの週末の過ごし方も限られてくるが、ここ最近は違う

このところスカーとジェイドはよく一緒にいる
とくに週末は、都合があうかぎり時間を共有していた
ふたりをそうさせるのには、ふたりの特別な友好関係にある


「どれから見る？」
数枚のDVDケースを取り出し選別するジェイドは座椅子を引っ張り出すスカーに訊ねる
おまえが見たいのでいいぜ、と返されじゃあこれにする、と一枚のDVDを取り出しデッキのトレイにセットした
リモコンホルダーからデッキのリモコンを取り出したところで背後からスカーの腕が腰にまわる
振り向けばスカーがすでに座椅子に腰かけくつろいでいた
入れたならこっち来いよ、と引き寄せる腕に逆らわずにジェイドはずりずりと引き摺られてスカーの胡坐の上に腰を据えた
邪魔だから外すぞ、とヘルメットをスカーに取り外され、頭部にスカーの吐息がかかるのを感じた

腰にまわされたスカーの両腕
背中越しにスカーの心音や胸腹の上下が伝わってくる
これだけ密着しているにも関わらず、伝わってこないものがひとつあった


「スカーって汗の匂いがしないんだな」
お互いつい数時間前までジムでトレーニングをしていて
汗もタオルで軽く拭いだだけで、シャワーも清涼剤も使っていないのに
なのに、スカーからはあの汗特有の匂いがしない
スカーの首筋に鼻先を寄せてふかく息を吸った
なんでだろ、しばらく逡巡してから目の前に垂れてきた赤い房を見てふと、思い出した


「そうか、鳥は汗をかかないのか」
目の前で揺れる房をひとつ弄びながら言うと鼻を摘まれた
だれが鳥だだれが、摘まれた鼻はそのままに頭をわしゃわしゃとかきまぜられた


「で、初っ端なに選んだんだ？」
「サイレンってやつ」
プシュッと小気味良い音はスカーが缶ビールを開けた音
しかしそれだけでスカーの返事はなかった










はい、スカー乙、まだ夜はこれからだ！

もう少し色々書きたかったけどグダグダしそうだったのでここで打ち切らせてもらいました

もっと上手い表現のしかたが分かれば・・・まだ活きる道が・・・っ！

[3回]